日本語ビデオレンタルショップに再び通うようになってしまった。この行動はおそらく僕の「アンチ・アメリカン・クリスマス的」姿勢が反映されているからに違いない。
この時期、アメリカ人の多くは仕事、帰省または訪問中の親族、クリスマスプレゼントのショッピング、クリスマスディナーの献立、クリスマスパーティーが頭の中でごっちゃになっている。巨大なバンやSUVの中では子供たちがチャイルド・シートで泣き喚く。
そんな連中のアブナい運転には付き合っていられないし、「クリスマス渋滞」に捕まるのも嫌だ。だから週末は外出を避ける。本を読むか、音楽を聴くか、ビデオを観る。
先日借りてきたビデオはそれまで見慣れず聞き慣れなかったもので、「去年ルノアールで」という一話10分の短編集のようなもの。これが僕にはバカ爆笑モノの大ヒットだった。
ウィキペディアによると、「広報番組『Eネ!』枠内で、2007年7月15日から2007年9月30日に毎週日曜深夜26:30–26:40(毎週月曜日未明2:30−2:40)にショートドラマとして放映された。全12話。」とある。月曜日の未明なんて見る人はいないだろうと思うのだが、色んなところで目にする人気俳優たちも数人出演している。面白半分に出演依頼を引き受けたのだろうか、バカなキャラになり切っていた。
番組の中でコーヒーは「ルノアール名物、ブレンドコーヒー」と呼ばれていたが、僕の記憶には「ルノアールのブレンドコーヒーは美味しかった」という印象は全くない。どちらかというと煮詰まった臭いのする濃い目のコーヒーという覚えがある。個人的に「ルノアールの名物」と言えばお替わりタダのトーストなんだけど。高校生の底なしの胃にはもってこいのスナックだった。
僕の中高時代にはルノアールは至る所にあった。駅前銀座と呼ばれる場所では頻繁に見かけた。今のドトールやスタバのようなものなのだが、それは所在地の話であって、店内は全く違う。「去年ルノアールで」ではあの懐かしいルノアールの店内の様子を的確に描写しつつ、現在の客層の様子を絡めて面白く表現している。
本来ルノアールは名曲喫茶で、従って流れているBGMはクラシックである。が、あれほど過激にクラシックとは無関係な客層が中心となっている名曲喫茶は他に例を見ない。店内は今の時代には信じがたいほど広く、一見馬鹿でかいキャバレーかダンスホールのようなインテリアで、通常照明は暗めだった。僕にとっては一人で行く類いの喫茶店ではなかったから、行く時はいつも同級生たちと一緒だった。
この番組の中では「ルノアールGinza」と表示されていたけれど、僕にはそれが本当に銀座にあるルノアールで撮影されたのかは分からない。前回日本へ行った時は新宿東口のディスクユニオン付近と大ガードから新宿西口に出て大久保方面に向かった所にあった。
今でもルノアールの店内では実に雑多な人たちが実にランダムな事をやっているのだろうか?次回日本へ行く際は必ず行こう、ルノアール。