4.23.2021

ワクチン接種管理システム:米国と日本

4月5日、1回目のワクチン接種を受けた。モデルナ製だった。2回目はモデルナ製ワクチンのスペックに従って自動的に4週間以内である5月3日と決まった。意図されたワクチンの効果は2回目の接種後、約2週間で定着するとされる。


カリフォルニア州中部の太平洋沿岸の町における1回目の接種を受けるまでの流れは:

  1. ワクチン接種対象枠に含まれる
  2. 予約
  3. 本人確認&登録
  4. 接種当日、窓口でチェックイン
  5. ワクチン接種(接種後15分間の体調確認)
  6. 2回目の接種自動予約完了
  7. 体調チェック確認メール

となっている。


各項目を説明していこう。

⒈ ワクチン接種対象に含まれる

カリフォルニア州では最初の該当者は医療従事者、医療機関や個人経営クリニックなどのスタッフ、そして警察、消防などのインフラ系従事者だった。ご存知のように、米国ではちょうどこの時期に政権交代があり、バイデン政権になって以降は本腰でワクチン接種を推し進めたおかげで進行は急速化する。

その後、65歳以上の高齢者及び基礎疾患がある者が対象となった。

4月1日に50歳以上の全てのカリフォルニア州民が対象枠内に加わり、4月15日から16歳以上の全てのカリフォルニア州民が対象となった。現在は「ほぼ成人枠」で進行中である。


⒉ 予約

オレは50歳以上の枠内なので、4月1日の時点で予約出来るようになったため、その日の朝、約1時間ネットに張り付いて予約をすることが出来た。

予約は対象となる人口の大半がオンラインで行っているようだ。高齢者や障害者たちは親族や知人が代わってオンライン予約するか、主にオンラインに弱い人たちを対象とした電話による予約が可能である。

予約システムはコンサートやイベントのオンラインチケット予約販売システムと似通っているという印象で、普段コンサートやライブのチケットを買い慣れている自分にとって特に違和感は無かった。ただし、この場合は競争率が高く、まるで5万人収容のスタジアムでのU2やQueenやテイラー・スイフトのコンサートの最前列中央の座席を取り合うような様相を呈しており、パソコン画面に複数のウインドーを立ち上げ、それぞれを再読み込みしまくってようやくワクチン予約をゲットする、という感じだった。

予約のために記入する情報は:氏名、生年月日、年齢、性別、人種、アレルギーの有無、基礎疾患の有無、基礎疾患がある場合はその内容、健康保険の有無とその内容、などである。

現在は人口が最も多い年齢枠の予約に対処しているところだが、ワクチンの膨大な供給量に支えられて競争率もそれほど激しい高みには達していないと思われる。なんせ米国全国で一日に400万件の接種が行われているという機動力である。


⒊ 本人確認&登録

予約が4月5日と決まった後、接種日の前日にメールで本人確認と登録を促される。本人確認には身分証明書カードの表裏と健康保険証カードの表裏の写メをアップロードする。これにはスマホでそれぞれのカードの両面を写メで撮り、指定のサイトの指示に従って完了する。

登録は前項で提供した個人情報を再度入力して同じサイトから送信する。

その結果、スマホの「お財布アプリ」、オレの場合はiPhoneの「ウォレット(Wallet)」アプリにワクチン接種1回目の電子チケットがCRコード付きで放り込まれて来る。これは日本の「接種券」に相当する。

接種当日はこれを提示し、CRコードをスキャンしてチェックイン完了とされる。


⒋ 接種当日、窓口でチェックイン

指定された接種サイトは車で5分もかからない近くの中学校のジム施設だった。入り口に近づくと、書類とペンを渡され、再度上記のような登録情報を手で記入した上、署名して提出し、接種の順番を待つ列に付く。

チェックインはパソコンを操作しているスタッフに電子版の接種チケットを提示し、スタッフがCRコードをスキャンして終了。ワクチン接種を行っている複数のブースの前に並んで順番を待つ。


⒌ ワクチン接種

ワクチン注射接種は1秒で終わる。チクッとさえ感じない拍子抜けする程の工程である。接種が終わると、米国CDCのロゴを載せた記録カードを手渡される。そのカードには指名と生年月日、ワクチンの種類と生産データ、接種日と接種時刻が記録されており、2回目の接種の際にはそれを持参せよとの事だった。

接種をしてくれたスタッフがジムの片側に広くスペースを確保した座席エリアを示し、15分座って安静にして接種後の体調確認を命じられる。ワクチンへの極度の副作用がある場合は、その間に発覚する傾向があるようだ。

異常がなければその時点で帰宅を許される。


⒍ 2回目の接種自動予約完了

ワクチン接種後、スタッフから2回目の接種予約が自動的に完了しており、その接種日を知らされる。もちろん、医療機関側のシステムにはその予約は既に入力されている。

現行ワクチンのうち、ファイザー製とモデルナ製ワクチンはそれぞれ3週間以内、4週間以内に2回目を接種するという仕様が定められているため、それに従って自動的に次の予約をシステム側から提示されるという流れのようだ。


⒎ 体調チェック確認メール

帰宅後、その日の午後に医療機関から携帯メールでリンクが送られて来た。そのリンクを開くと、医療機関のウェブサイトのページが表示され、現在の体調、体調が悪い場合はその症状、頭痛や微熱・悪寒の有無、疲労感、倦怠感、関節痛、注射を受けた局部の痛みなどに関するアンケートに答えて提出する。

この体調チェック確認メールは、同じものが接種日当日を含めて10日間毎日一度送られてくる。接種日から10日後、このメールは停止されたが、そのさらに10日後、この体調チェック確認メールが届いて、上記と同じアンケートに答えた。予想では前回の確認メールから1週間から10日後に再度アンケートが送られて来ると思われる。

これはおそらくワクチン接種後の体調や副作用に関するデータの集積の一環であると思われる。変異株が多種発生している状況があり、現行ワクチン関連のデータを蓄積していくと同時に変異株にも対応するであろうワクチンのアップグレード版の研究データとしても役に立つであろうと考えられる。

来る2回目の接種でもほぼ同様の流れになると予想される。


ワクチン接種管理システム

このワクチン接種の流れを体験して考えたのは、ワクチン接種の対象枠に加えられた時点から接種後の体調確認メールのやりとりに至る工程が全てシステム化されて、ワクチン接種を受ける米国在住者、各州住民の膨大なデータが蓄積されデータベース構築が為されているのだが、現在に至るまでのシステムがいかに迅速に開発され、動作確認もおそらく行われていたか、という点である。

思い起こせば、「米薬品企業、コロナワクチン開発中」というニュースが流れ始めたのは昨年2020年夏から初秋にかけてであった。当時のトランプ政権はおそらく「あくまでもビジネスの観点から」米国企業によるコロナワクチンの開発を評価し、資金の援助も行った。

複数のワクチン開発が進み、2020年年末には米国政府による緊急承認がなされ、同じく年末から今年の年明けにかけての時期に医療従事者へのワクチン接種が開始された。

つまり、コロナワクチン接種の工程に沿ったシステムはそのわずか数ヶ月間で開発されていたことになる。このシステムはオレが知る限り、米国全土をカバーする全国的なシステムではなく、各州の医療団体がその州の法律や条例、州独特のコロナ対策などに沿って設計、開発されたものであろう。米国では州によって法律や条例、コロナ対策の手法が異なるからである。

とすれば、それぞれの州や医療機関などで個別のシステムがその短期間に開発され、立ち上げられたことになる。

3〜4ヶ月間に、これらのシステム開発が同時進行していたのには驚く。もっとも、どの州や医療機関のシステムも全くの白紙から開発された訳ではなかろう。既存の医療システムや、果ては前述のようなコンサート・イベントチケット予約・販売システムから必要な部分を再利用し、コロナワクチン接種に特化した部分を開発して組み込んだのではないかと想像がつく。

ワクチンのオンライン予約は当初は希望者が殺到して予約をゲットするのは困難であった。それでも多数のアクセスの負担によってシステムが落ちてダウンしたという知らせは現時点では聞いたことも自身が経験したこともない。工程はすこぶるスムーズであった。

その迅速な開発と動作確認の実行もさることながら、既に変異株への対応に向けて各ワクチンのアップグレード版が研究・開発されているであろうことは想像に難くない。

米国の主要医療機関や生物学者の間では、このコロナウイルスによるパンデミック傾向は世界的に今後数年続くとの予想が主力である。ワクチン研究・開発・販売を担う薬品企業の一つ、ファイザーは、今後数年間はコロナワクチンを毎年接種する事が必要となろうと予測している。もっとも、ワクチンで収益を上げている企業が言う事であるから、宣伝要素も少なからず意図されていると思われるが、一方では今後数年間の継続的ワクチン接種の必要性は否定出来ない。

米国では数億人分のワクチン接種データが集積されてデータベース化され、後にいかようにも検索出来るようになるであろう。また、「ワクチン・パスポート」と呼ばれるワクチン接種を完了したという証明書が正式に発行されれば、パンデミック渦中での空港や公共施設への入場の際に役に立つであろう。

現時点では、しかし、米国政府はさまざまなセキュリティー関連の対処が困難を極めると判断し、正式にはそのようなワクチン接種証明書を米国政府主導で発行することはないという見解を示している。

それにしても、ワクチン接種を毎日300万件から400万件行い、同時に既に開発されて作動している管理システムを用いて将来のワクチン開発や副作用の研究などを継続的に行ってゆくための術が既に存在し、むしろ必要不可欠なものになっているのを目の当たりにすると、米国の国力と機動力には感心せざるを得ない。


日本の現状

さて、日本における状況はどうか。前述のようにコロナワクチンの開発は複数の薬品企業が昨年夏から秋には治験が可能なレベルまで捗っていた時点で、各国の政権やリーダーたちが有能であれば、既に「ワクチン外交」を始めていなければならなかった。が、日本政府はその初動をほぼ全くしなかったのであろう、今になって、しかも日本国内における「第4波」が認識された時点でワクチン確保・入荷に躍起になるという体たらくである。

現時点で国民100人あたりのワクチン接種の1回目は、日本ではわずか1.9人で、2回目を接種して今年分のワクチン接種を完了したのは人口の0.7%にしか過ぎず、日本という国が先進国とは呼べず、無能な衰退国としてしか見えないのが現状である。

日本政府と官庁役人がワクチンの確保・入荷にやたら躍起になっている間、このようなワクチン接種管理システムは開発されているのだろうか。少なくとも考案されて、設計段階に入っているのだろうか。

日本の権力者たちの動向を見るにつけ、そのようなシステムが同時進行で開発されていると想像するのは非常に困難である。なにしろ、東京五輪に備えた70数億円をかけたインバウンド用の感染者接触探知システムさえ全く作動せず、他人事のように放置されていた訳だから、米国で行われたシステム開発に携わる能力を、日本政府が確保して仕事をさせているとは考え難いのだ。例えそのようなシステムを開発出来るとしても、動作の質やセキュリティーの面で世界レベルに達するとも思えない。

【訂正】このエントリーを書いた後、複数の国産ワクチン接種予約システムと日本マイクロソフトがワクチン接種管理システムを開発していたという事実を知った。前者の国産ワクチン予約システムは、稼働開始後に27万件の個人情報の漏洩が発覚した。他の国産ワクチン接種予約システムは予約希望者のアクセスが殺到してシステムダウンしている。一方、日本マイクロソフトはあくまでも米国籍企業の日本支社であるため、Amazonクラウドに国家機密データを丸投げするのと同じ国家的セキュリティーの脅威となり得る可能性は秘めている。

また、たった150人ほどの接種希望者の予約を扱うにもシステム上の問題が発生し、すでに混乱しているワクチン予約・接種の進行を妨げ、更なる混乱を生んでいる。再度言うが、このような不都合や混乱がわずか150人程度の応募者で発生している。

東京に住む知人から聞くところによれば、日本では「国民全員を対象とする制度を施行する際は紙媒体を使う」らしい。誰も取り残さない、という言わば矜持のような名目がその利用なのであろう。事実、ワクチンの「接種券」は郵便による郵送で各一般市民に送られて来る紙媒体だと言う。本人確認や登録もおそらく紙媒体に手で記入し、後にそれがようやくシステムに入力されるのであろう。その紙媒体による登録やワクチン接種記録は施設や団体間でFAXや郵送や手動の配達によって行われるのだろう。

実家がある京都府の対応は自治体の中でも酷いらしく、予約システムがダウンした事への対応として「接種券」に加えて「予約券」なるバンドエイド的な代物をばら撒いている有様である。対象者は現在高齢者層であるが、高齢者にこのような複雑な工程を押し付けても収拾がつかないであろうことは容易に想像がつく。

日本のワクチン状況は予約の時点で混乱を極め、日本のアナログ体質を浮き彫りにしている。それも、上記のような工程上の理由と、政治家や役人の保身願望による「アンチ・デジタル」傾向が背後にある。つまりデジタル化による「自動化」によって、国と自治体の政治家や役人の仕事、肩書き、役職が脅かされる可能性があることへの恐れの現れである。

完全にアナログの世界である。

ちなみに、カリフォルニア州の人口はおよそ4000万人である。システム上の問題は現時点では聞いたことが無い。


日本における国家レベルシステム

2020年2月、日本政府は国の機密情報や国民の個人情報を含む「国家データ」の管理やバックアップ保存を日本国籍の企業ではなく、米国企業であるAmazonクラウドに丸投げした。加えて、つい先日、日本のスマホ人口の大半が使用しているとも考えられるLINEの個人情報が委託開発先の中国企業から丸見えになっている事実が発覚し問題視された。

上記のように、コロナワクチン接種関連のデータはほぼ全てが各国の一般市民の個人情報である。従って、当たり前過ぎるほど当たり前の事なのだが、Amazonクラウドや中国企業に筒抜けになるような誤りは許されない。つまり、このコロナワクチン接種管理システムは「日本国内の人材とアセットだけを用いて国内で開発されるべきもの」なのだ。今の日本にそれを短期間で達成する能力はあるのだろうか?オレはそんな能力や人材は無いと見ている。

技術大国とも呼ばれた日本は30年ほど前に消滅した。現在は東南アジア諸国と同レベルかあるいはそれ以下であろう。「デジタル庁」などは全くお話にもならず、構想の時点で既に失敗している。なんせデジタル庁のトップは国会開催中にワニ動画を観て喜んでいた薄らバカである。そんな奴に一体何が出来ると言うのか。そもそもデジタル庁の実際の目的は、体の良い「マイナンバー」なるものを逆手に取り、中国共産党中央独裁政府が推し進めている完全な国民監視システムであって、国民が利用出来、恩恵を受けるようなデジタル的システムではない。そもそもそのような国民監視システムを日本で日本の人材とアセットを駆使して構築するにはハードルが多過ぎ、高過ぎる。下手をすれば海外企業に委託開発させるのではないか、などと勘繰ってしまうほど期待度、信頼度は低い。

問題は、今後数年続くであろうと想定されているこのパンデミック傾向にあって、日本のアナログ体質が改善・刷新されるのであろうかという点である。今年の現行ワクチンについては既に時は遅く、ウダウダの手動方式で大量の紙媒体と奮闘することになるであろう。数年後にはちょっとはマシになっているのだろうか?

ワクチン、ワクチンと騒ぐのは、それが世界的傾向であるのだから十分理解出来るが、それだけしか見えず、その工程を管理し、その工程から得られるビッグデータを用いて将来を見つめるという見地どころかその必要性の認識さえ今の日本には欠如しているように思われる。

無能な日本政府がその希少な能力に見合った事が出来ると思われるのは、日本の国際空港や港における入国審査で、「海外で既にワクチン接種を完了した渡航者」の扱いを再考して、日本への入国者は単純に誰でも彼でも2週間の隔離を義務付けられるという理不尽な扱いを改善することくらいであろう。

もっとも、新型コロナウイルスが日本国内で蔓延し始めた際の初動さえまともに実行出来なかった日本のことである。入国審査での渡航者の扱いが適切にタイムリーに行われるということさえあてにならないと予想せざるを得ない。

現行ワクチンの接種と変異株に対応するワクチンのアップグレード版(「ブースター、Booster」と呼ばれる)の研究・開発・治験は、日本の外では急激に加速しており、海外特に先進国からの日本への渡航者はその大半が現行ワクチンに関しては接種完了している状況となろう。世界は日本のはるか先を進んでいるのである。