
車で10分も行かないところに、有名ブランドがずらりと並ぶ「サンタナ・ロー」というショッピングセンターと、大きなショッピングモールが隣通しに並ぶ一角がある。そこへ行くハイウエーの出口がこの週末からいきなり渋滞し始めた。クリスマスショッピングのシーズンが始まった。
ハロウィーンが過ぎたと思いきやリテールの店頭は早くもクリスマス商戦に向けて模様替えしている。僕がアメリカに渡った70年代、そしてその後20年ほどは、商店がクリスマスショッピングに備えてデコレーションを始めたのは11月末のサンクスギビング(感謝祭)の週末が明けてからだった。90年代になると、ハロウィーンが終わったらテレビでクリスマスモードのコマーシャルが出始め、近年に至ってはクリスマスのデコを見始めるのが異常に早くなり、大きなショッピングモールでは9月にはハロウィーン、サンクスギビング、クリスマスのデコが全部出てしまっているところさえある。つまりお化け、カボチャと紅葉と七面鳥、クリスマスツリーが同時に飾られるのである。
大手多国籍企業から個人経営の商店に至るまで、クリスマス商戦は死活問題であり、年に最も売り上げが高くあるべき時期となった。この時期に売り上げが芳しくなければ企業や商店は確実に潰れる。クリスマス、年末を含む四半期決算でその判定が下る。
アメリカの消費者はこの30年間で確実に年末消費パターンを変えられてしまった。洗脳されたと言っても良い。
日本のクリスマスも企業や商店の書き入れ時だろう。宗教的には無信仰に近い文化だから、物質が先行するのはやむを得ない。独身者がロマンチックなクリスマスイブを一緒に過ごす相手を探すのにやきもきしたり、彼/彼女のプレゼントを選んだり、カップルがホテルとレストランの予約に奔走したりする。テレビの連ドラでは必ずと言って良いほど「クリスマスのミラクル!」っぽい過剰演出のクライマックスがある。ライトアップスポットは即デートスポットやおばちゃんの集団がドカドカワイワイ出かける場所になる。バカバカしいと言ってしまえばそれだけだが、ある意味微笑ましくもあり、可愛くもある。日本化したクリスマスには宗教絡みの「嘘」が無い。キリストの誕生日もクソもなく、楽しく、出来ればロマンスに恵まれ、色鮮やかに楽しい季節。それで良いと思う。
アメリカというこの消費大国では、クリスマスは一年で最も無駄で最もエゲツナイ消費が行われる時期、それだけだ。が、キリスト教信者の数が多いためか、一応キリストの誕生日という、今では後付けとさえ思えるような名目上のカモフラージュを装う。
ガソリンの燃費が最悪のでっかい車を飛ばしてショッピングモール、ショッピングセンターを走り回り、入り口に最も近い駐車スポットをめぐってテンションを上げて競争したり言い合いになったり。モールの中では貯金があろうが無かろうがクレジットカードに全てをゆだね、クリスマス用に吊上げられた高めの値段でそれほど必要でもないものを買いまくる。その反面教会の礼拝にはちゃんと出て「クリスマスは感謝の季節。恵まれぬ貧しい人にも幸あるように」などと真顔で祈っている。恵まれない人たちにはこれっぽっちも恵む事がないか、税金の控除の対象になるという理由も手伝って適当に寄付するくらいだろうか。きれいごとはともかく、「クリスマス・キャロル」のスクルージのような連中がほとんどである。普段は性格がいい人でもクリスマスショッピングになるとストレスが貯まるのか、嫌な面を露呈することさえある。
僕に言わせてみれば「嘘だらけ」なのだ。クリスマスだから買い物しまくって、美味いもん食いまくって、彼/彼女とロマンチックに過ごして、子供が欲しいというものを買ってやって、ついでに自分が一番欲しいものもチャッカリ買って、友達や同僚とホリデーパーティーで飲んで騒いで・・・だけの方がむしろ賛同出来る。
一度で良いから日本で奇麗な女性と「ロマンチックなクリスマスイブ」なるものを過ごしてみたいものだ。