夕方になると、散歩の出発点に近い灯台の周りにはドラマーやポイダンサーやフラフーパーが集まってきてドラムとダンスのジャムセッションになる。フェンスの向こうは上級者が集まるサーフスポットで、短くて素早い小回りが利くサーフボードを操るサーファーが観光客の注目を集める。ヒッピーたちのドラムスを後に散歩が始まる。

左は海、右はアッパークラスの住宅地。良い家には違いないけど、これだけ人の目を引く場所ではそれほどプライバシーがあるとは思えない。海が見えるから当然窓を大きくしたいのはうなずける。だけどその窓を通して歩行者、自転車や車で行き交う人たち、観光客が一日中後を絶たないだけに、たとえそんな家が買えても住み心地は保証されないような気がする。
習慣的にこの散歩をしていると、毎回同じ人たちを見かけるようになる。小さい犬を連れている老夫婦、ジョッギングする学生、写生するアーティストのカップル、とか。その中に一人オールドヒッピーがいて、先日も会った際に数分立ち話をした。彼が言うには、この歩道から見える陽が海に沈むのは冬だけ。夏が近づくに従ってこの地点から見える日没は次第に陸と住宅地に沈むようになり、海に沈むのに比べると美しくはない。だから多少寒くても冬のサンセットは特別なんだ、と。確かに。

折り返し地点を通過してしばらく経った頃、日没後の光加減が日によって素晴らしいときがある。ちょっと雲が出ているとドラマチックな、神々しい光を見ることが出来る。それを時々振り向きながら灯台まで戻ってくると、ドラムスの音は大きくなっているし、ファイアーダンサーも登場する。この時間帯は観光客はすでにおらず、地元の人たちだけのシーンになっている。サンタクルーズの風物詩のひとつ。
