3.29.2009

サンセットウォーク

晴れた週末の夕方はなるべくサンセットウォークに出かけることにしている。遊園地がある浜辺の西側に小さな灯台があり、その周辺はピクニックエリアと駐車場もあって、毎日やってくるサーファーをはじめ町の人たちや観光客で結構賑わう。そこから西へ約2キロ西にあるナチュラル・ブリッジスと呼ばれるビーチまで歩く。速く歩いて約一時間半ほどの行程。

夕方になると、散歩の出発点に近い灯台の周りにはドラマーやポイダンサーやフラフーパーが集まってきてドラムとダンスのジャムセッションになる。フェンスの向こうは上級者が集まるサーフスポットで、短くて素早い小回りが利くサーフボードを操るサーファーが観光客の注目を集める。ヒッピーたちのドラムスを後に散歩が始まる。


左は海、右はアッパークラスの住宅地。良い家には違いないけど、これだけ人の目を引く場所ではそれほどプライバシーがあるとは思えない。海が見えるから当然窓を大きくしたいのはうなずける。だけどその窓を通して歩行者、自転車や車で行き交う人たち、観光客が一日中後を絶たないだけに、たとえそんな家が買えても住み心地は保証されないような気がする。

習慣的にこの散歩をしていると、毎回同じ人たちを見かけるようになる。小さい犬を連れている老夫婦、ジョッギングする学生、写生するアーティストのカップル、とか。その中に一人オールドヒッピーがいて、先日も会った際に数分立ち話をした。彼が言うには、この歩道から見える陽が海に沈むのは冬だけ。夏が近づくに従ってこの地点から見える日没は次第に陸と住宅地に沈むようになり、海に沈むのに比べると美しくはない。だから多少寒くても冬のサンセットは特別なんだ、と。確かに。


折り返し地点を通過してしばらく経った頃、日没後の光加減が日によって素晴らしいときがある。ちょっと雲が出ているとドラマチックな、神々しい光を見ることが出来る。それを時々振り向きながら灯台まで戻ってくると、ドラムスの音は大きくなっているし、ファイアーダンサーも登場する。この時間帯は観光客はすでにおらず、地元の人たちだけのシーンになっている。サンタクルーズの風物詩のひとつ。

3.03.2009

STS9 @ The Fillmore

アトランタでのニューイヤーズをキャンセルしたのはこのフィルモアでの4ショーの日程がアップされたから。南部と言ってもアトランタの冬は寒い。めっちゃ遠いし・・・金曜日は休みを取って木曜日の夜からサンフランシスコに滞在。

木曜日はほぼソールドアウト、もしかしたら当日完売になったかもしれない賑わい。金・土はずっと前からソールドアウトになった。さすがに日曜日はゆったりとスペースがあるだろうという予想だったけど、ショーが始まる頃にはフロアはかなり混んでいた。

日曜日以外は新曲におなじみの曲を混ぜ込むという感じのセットリスト。古い曲に新しいサウンドとアレンジを吹き込んだ演奏に時々新曲を入れたショーは日曜日。以前からのファンが喜びそうな。

4夜ともにDJが一人ずつオープナーを務め、バンドのオープナーは無し。なんかその方がすっきりして良かった気がする。最初の3ショーは2時間を超えるワンセットをマルチのアンコールだったのが、日曜日だけは2セット+1アンコールのフォーマットだった。いろいろ変えて試しているんでしょう。

試すと言えば・・・ステージでの彼らのポジションが一掃されて新しいステージフォーマットになった。ザックはステージ向かって左側、ジェフリーが右側でそれぞれかなり高い位置にプラットフォームを組んで観衆を見下ろすような感じ。マーフィーも左に移動、ザックのドラムスの麓に。ハンターはジェフリーの前に。そしてフィップスがステージ中央に位置し、しかもオーディエンスに向かって演奏する形になった。フロアからガンガン弾きまくるフィップスの顔を正面に見ることが出来るのは・・・いいねぇ〜そしてライブペインターのクリスとジェイはステージの両端に陣取っていた。かっこいいフォーマットだ。

だけどこれはただフォーマットを変えただけじゃなくて、その背後にはオーディオ関連のいろんな理由があるらしい。サウンドが違う。前に比べてかなり澄んだ音になったような。ヴェニューによっては音量が高過ぎることもあったベースもうるさ過ぎず、しかも効果的。ジェフリーのパーカッションやフィップスのキーボードがより鮮やかに聞こえた。

もう一つ、バックドロップがアトランタのニューイヤーズの写真で見られるようなスクリーンになっていた。投射ではなくスクリーン自体がピクセルの集合体のもの。他の照明が消えてこのスクリーンがオンになる時はバンドメンバーがシルエットになって絵になる。

知らない曲、つまり「Peaceblaster」にも入っていない曲が聴けたのは金と土。一番客数が多いこの二晩にそういう曲を持ってくるというのはいかにも彼ららしい。ダークでヘビーなビートとベースにギター、シンセ、サンプリング、エフェクトがかぶさるのはずっと前からの試みだけど、いつも新鮮で斬新で意外性に富む演奏だという点は感心してしまう。アレンジにアレンジを重ねて「自作のリミックス」のようになってきた古い曲でもそれは同じ。イントロ聴いても分からないものもあったり。

フィップスはアナログ・モジュラー・シンセのスタックとmonomeを導入。あの人、何台シンセ持ってんだろ?キース・エマソンとかリック・ウエイクマンのステータスに近づきつつありますよ。あんなにエキサイトして動くフィップスは今まで観たことなかったな。それとも正面を向いたから観れるようになったのか?

金土共にソールドアウトだったのに、観衆の反応がイマイチ。不思議なのは、曲の途中ではみんなガンガン踊りまくっていて叫び声も挙げるほど興奮しているのに、曲が終わると静かになってしまっていた。あまりにも凄い演奏に言葉も出ない、という感じでもなかったし。パーティーし過ぎだな、あれは。あるいはセットブレイクがあると無いとであんな風に違うもんなんだろうか。木と日は、客のほとんどがこのバンドにハマってる人たちばかりだったようで、反応の質がもっと良かったように思う。

やっぱりこのバンド、本物。最高だわ。

ちなみに、ジェフリーに娘「ルビー」誕生。ザックは婚約したし、ジェイも今年結婚する。フィップスの娘「アヤナ」ももう2歳。だってあのザックが今や30歳ですよ。みんな大人になってますね。バンドメンバーも、クルーも、それをサポートする「ファミリー」もみんな素晴らしい人たちだ。若くてポジティブでクリエイティブで愛がこもったバイブレーションを持っている。音楽を通じてだけじゃなくて、家族生活面でもユニークなコミュを形成している。ただ音楽だけじゃない。総合体として感心してしまう。そんなコミュニティーに加えて頂いているだけでもインスピレーションを浴びることが出来る。今の僕にはとても有り難い。

幸せ。